L'ange Sauvage

僕は野生の天使、熱いガゼルの体を抱きしめる / 僕は待つ 神々の怒りを、あるいは悪魔の美しさを
僕の死にかけた世界を覆いつくしてほしいから  ――――― CYRIL COLLARD





ぼくを葬(おく)る  2006/12/20(水)
そして、ひと粒のひかり  2006/09/12(火)
CRASH  2006/08/23(水)
木靴の樹  2006/08/23(水)
ALWAYS 三丁目の夕日  2006/08/08(火)
SAW, SAW2  2006/08/08(火)
シン・シティー  2006/06/26(月)
ある子供  2006/06/26(月)
コーヒー アンド シガレッツ  2006/06/14(水)
ふたりの5つの分かれ路  2006/05/22(月)
ランド・オブ・プレンティ  2006/05/22(月)
輝ける青春  2006/05/10(水)
靴に恋して  2006/05/10(水)
ライフ・イズ・ミラクル  2006/05/06(土)
エレニの旅  2005/05/19
まぼろし  2002/10/04
天国の口、終わりの楽園  2002/08/29
ヴェルクマイスター・ハーモニー  2002/07/03
ノーマンズ・ランド  2002/06/14
青い夢の女  2002/01/09
夜になる前に  2001/10/03
レクイエム・フォー・ドリーム  2001/03/10
ダンサー・イン・ザ・ダーク  2000/12/25
クレーヴの奥方(マノエル・オリヴェイラ監督) と フィデリテ(アンジェイ・ズラウスキー監督)  2000/06/23
オール・アバウト・マイ・マザー  2000/05/12


ぼくを葬(おく)る
パリ在住の31歳、ゲイのカメラマンが死の宣告を受ける。
それからの彼を行動を追った映画である。

フランソワ・オゾン監督が挑む死の三部作の第二作目。(一作目はまぼろし)。

これに似たストーリーのものは多いが、特に『野生の夜に』を思い出した。

『野生の夜に』の場合は、監督がエイズに冒され、映画と同様に死が近づくと言う切迫感がモロに映像に出ていたが、『ぼくを葬る』は至って穏やかだ。

映像の美しさは心に残る。
Date: 2006/12/20(水)


そして、ひと粒のひかり
ショートフイルムを主に製作していたアメリカ人、ジョシュア・マーストンの長編デビュー作。シカゴ大学で政治学の文学修士号を、ニューヨーク大学で映画製作の芸術修士号を取得した社会派の監督だ。

この映画はコロンビアの麻薬運び屋の実態を追った作品。

主演のカタリーナ・サンディノ・モレノはコロンビア人。
シャーリーズ・セロンの『モンスター』にも出ていた。

話はいくらでも大きく膨らませそうだが、いかにもありそうな実話風にまとめられている。
Date: 2006/09/12(火)


CRASH
テレビ畑を歩いてきたポール・ハギス初監督作品。

ミリオンダラー・ベイビーの脚本で注目され、今作でいきなりのアカデミー賞3部門(作品賞、脚本賞、編集賞)受賞となった。

ロスの人種差別問題をストーリーに絡めつつ、多焦点のストーリーを最後にまとめるあたりなかなかの手腕である。

もう少しキレが欲しい所だが、ハリウッド作品ゆえ制約も多かったのだろう。特に初監督とあっては、そのプレッシャーも仕方ないか。
Date: 2006/08/23(水)


木靴の樹
1978年のカンヌ映画祭パルムドール受賞作品。

イタリアのエルマンノ・オルミ監督が19世紀の北イタリアベルガも近郊の農村の貧しい暮らしぶりを描いた秀作。

まるでミレーの絵画を見ているかのような錯覚にとらわれるシーンが多く登場する。なぜかこの作品は見逃しており、もっと早い時期に観たかった。

なお、エルマンノ・オルミ、ケン・ローチ、アッバス・キアロスタミ3監督(全員がカンヌのパルムドールを受賞)によるコラボ映画『明日へのチケット』が今秋公開予定。
オムニバスになるのだろうか?楽しみである。
http://www.cqn.co.jp/ticket/
Date: 2006/08/23(水)


ALWAYS 三丁目の夕日
泣く、泣くとの評判を聞いていたので、ハンカチを10枚用意して観たが、完全に拍子抜け。一体どこで泣くんじゃ。

時代は昭和33年、ぼくが5歳の頃でもあり、時代背景は良く知った世界。作りこまれたセットは当時を思い出すのに十分だ。

でも、こんなに凡庸なストーリーではとても感動出来るというレベルに達していない。ありふれた出来事の積み重ね。意外性もゼロ。

ぼくはまだまだ過去を振り返るような歳じゃないなとつくづく思った。
Date: 2006/08/08(火)


SAW, SAW2
流行のサイコサスペンスだが、目の付け所がいい。
登場人物も少なくいかにも低予算で作られてはいるが、どんでん返しも用意されており抜け目はない。

B級映画として十分楽しめた。
Date: 2006/08/08(火)


シン・シティー
ブルース・ウィリス、ミッキー・ローク、クライヴ・オーウェン、ジェシカ・アルバ、ベニチオ・デル・トロ、イライジャ・ウッドなど、個性的な俳優が勢揃い。

コントラストの強いモノクロ調の映像はいかにもハードボイルド。

デヴォン青木(ロッキー・青木の娘!)の和風女殺し屋っていうのは、キルビルなどでもお馴染み。ハリウッド作品なら定番かな。

B級作品としてはまあ合格ライン。
Date: 2006/06/26(月)


ある子供
2005年カンヌ国際映画祭パルムドール大賞受賞。
「ロゼッタ」「息子のまなざし」のジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督。

確かに話題にはなった作品だが、いかにも小粒で深みにも欠ける。

主人公が頭の足りない“子供”では仕方がないか。
Date: 2006/06/26(月)


コーヒー アンド シガレッツ
ジム・ジャームッシュ監督の短編集。

ロベルト・ベニーニ、ケイト・ブランシェット、イギー・ポップ、トム・ウェイツなど有名ミュージシャンや俳優達がコーヒーとタバコを手に対話しているだけなのだが、実話とフェイクを織り交ぜテンポのズレも絶妙。

元は86年にテレビ番組のために作られたものがはじまり。
その後、ぽつぽつと撮られたものの11篇の集大成が映画となった。中でもイギー・ポップとトム・ウェイツの顔合わせはカンヌ映画祭の短編部門最高賞を受賞している。

Date: 2006/06/14(水)


ふたりの5つの分かれ路
人生には何度も選択の場面が訪れる。後悔したところでやり直しも容易ではない。

フランソワ・オゾン監督が描く世界は離婚経験者のぼくには痛い場面が多く出現する。

だが、前に進むしかない。

ゆっくり振り返るのはもう少し後にしよう。

Date: 2006/05/22(月)


ランド・オブ・プレンティ
「ベルリン・天使の詩」「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」など数々の名作を生み出したヴィム・ヴェンダースが「パリ、テキサス」以来の最高傑作を生み出した。亡き母の手紙を伯父に届けるため、10年ぶりに故郷アメリカに帰ってきた姪、ラナ。伯父、ポールと再会したラナは、アラブ系のホームレスが殺される現場に居合わせたのをきっかけに、一緒にアメリカを横断する旅に出る。それは生きること、愛することを見つめる明日への旅の始まりだった─。2004年ヴェネチア国際映画祭に正式に出品され、スタンディングオベーションの喝采を受け、見事ユネスコ賞を受賞した、力強く心に染みる感動作。


という触れ込みだったが、内容は地味。
元ベトナム帰還兵と911と貧困、アメリカ人にとってのトラウマを取り上げているものの切り込みに深みが足りない。
Date: 2006/05/22(月)


輝ける青春
イタリアのMarco Tullio Giordana監督が2003年に発表した代表作。

1966年から2003年までの1家族の波乱に満ちた生活を丁寧に追った傑作で、第56回カンヌ映画祭ではある視点部門でグランプリを獲得。

昨年のイタリア映画祭でプレミアム上映され、岩波ホールでもロードショー公開されたが、6時間を超える長尺ゆえ、家で観たいとDVD化を待ち望んでいたものだ。
(映画館ではお尻が痛くなっちゃうもの。7時間を優に超えるタル・ベーラ監督の『サタンタンゴ』では大変な思いをしたので)。

この映画に登場した66年からの世界情勢は、自身のリアルな体験としてあるので、人生と照らし合わせながら楽しんで観る事が出来た。おまけに撮影、脚本ともレベルが高いので満足度は満点に近かった。
Date: 2006/05/10(水)


靴に恋して
スペインの新鋭ラモン・サラサール監督が今のスペインをスタイリッシュに活写。靴のエピソードに女性を重ねた脚本も靴大国スペインならでは。

主演のナイワ・ニムリは抜群のスタイルで一目ぼれ。
病院の医師の役で監督自身も出ている。

アンヘラ・モリーナは、「欲望のあいまいな対象」でヒロインをやっていたが、覚えている人はいるだろうか?既に面影はないかも。
Date: 2006/05/10(水)


ライフ・イズ・ミラクル
エミール・クストリッツァ監督は、旧ユーゴスラビアのサラエボ生まれ。政治問題をシニカルに笑い飛ばす味付けと人間賛歌にアクの強さを発揮。

『パパは、出張中!』と『アンダーグラウンド』でカンヌ映画祭パルム・ドールを、『アリゾナ・ドリーム』でベルリン国際映画祭銀熊賞を、『黒猫・白猫』でヴェネチア国際映画祭監督賞を受賞。


最新作『ライフ・イズ・ミラクル』もボスニア紛争に題材を得ているわけだが、そのヴォリューム感はかなりずっしりとしており、見所も多い。今作品では犬、猫などが見せる偶然のショットにも冴えがある。

監督自身も参加しているジプシー・バンドである「ノースモーキング・オーケストラ」の演奏も魅力的で、独特の味わいがある。
Date: 2006/05/06(土)


エレニの旅
ギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロスの6年ぶりの新作。1人の女性の半生を通し、ギリシャの現代史を描く。構想は膨らみ、3時間近い大作ながら3部作の1作目に位置し、20世紀を総括する壮大な試みはまだ始まったばかりだ。

かつて70年代には、「1936年の日々」、「旅芸人の記録」、「狩人」という3部作を発表し、人民そのものを主人公にギリシャの歴史を描き、その後は映画監督や作家といった知識人を中心に据え、彼らの思索を通じた語り口に移行して行った。

しかし今作品では平凡な女性を主人公に、見事に歴史を切り取ることに成功している。CGを使わずに撮影された洪水のシーンなど一生忘れる事が出来ないインパクトの大きい映像には驚きを禁じえない。悲劇に彩られた女性の人生であるけれど、最近の紛争を見ても分かる通りこれは決して特異なケースではない。人間とは何と愚かな生き物なのだろうか。
Date: 2005/05/19


まぼろし
フランソワ・オゾン監督のいかにもフランス映画らしい話題作。
今年56歳になったシャーロット・ランプリングだが、
衰えのないスタイルと形の崩れないバストでベッドシーンすら軽くこなしている。
ルキノ・ビスコンティの『地獄に堕ちた勇者ども』から33年、リリアーナ・カバーニの『愛の嵐』からも29年、
あの頃の彼女は一際美しかった。
この2本の映画では、女の持っている強さとしたたかさ、セックスの神秘にも触れられたような気がしたものだ。

年月は止めようもないのは事実、しかし、彼女の持つあの妖艶さと天性の退廃ぶりは今も健在だ。

大切な人生の伴侶を突然失った時、どう生きて行くのか、この映画のテーマは重い。
ランプリングの圧倒的な演技力があってこそ、この映画が成立しているのは確かだが、
オゾン監督の才智が見事に開花、現実と幻想との狭間をうまく描いている。

観客も、シネマライズでは珍しく50代と思しき中年の男女が半数を占めていた。
このあたりの奥様方は文化村中心に出没率が高そうだ。
対してシネマライズ派の20代の観客も多かったが、どんな感想を持ったのかちょっと聞いてみたかった。
Date: 2002/10/04


天国の口、終わりの楽園
昨年のヴェネチア映画祭で最優秀脚本賞と新人演技賞を獲得した話題の映画。
監督は『大いなる遺産』などハリウッドでも活躍、
またこの映画の成功を受けて『ハリー・ポッター3』の監督に抜擢されたアルフォンソ・キュアロン監督。
撮影は『彼女を見ればわかる事』のE・ルベツキー。

フランク・ザッパの「ウォーターメロン・イン・イースター・ヘイ」のムードで監督はこの映画を撮ったという。
好奇心いっぱいでどこにでもいそうな17歳の少年2人と人妻のロードムービーだ。
青い空、濃い緑、黄色い大地、コバルト色の海が際立つメキシコを舞台とし大らかな生と性を活写、
魅力がいっぱい詰まった作品に仕上がっている。
これは、2人の少年が大人になる旅、1人の大人が解放される旅、
そして若さがはちきれる国メキシコがアイデンティティーを見つける旅なのだ。

ただ残念なのが、外国人達から失笑が漏れていた相変わらずの性描写での「ぼかし」。
映画の開けっ広げな視線に対して、あまりにも対照的、もはや情けなさを通り越している。
Date: 2002/08/29


ヴェルクマイスター・ハーモニー
1955年生まれのハンガリーの鬼才タル・ベーラ監督の新作『ヴェルクマイスター・ハーモニー』が公開中だ。
この映画は、クラスナホルカイ・ラースローの小説「抵抗の憂鬱」を脚色したものだが、
7時間半の大作『サタン・タンゴ』(1994)で一躍世界を瞠目させたタル・ベーラがまたも描くモノクロの黙示録。
今作品は2時間25分とそれほど長尺ではないが、全編で僅か37カットと、監督の異才ぶりは突出したものだ。
モノクロのフイルムに焼き付けられたその孤高の芸術性。これは拭い難い悪夢なのか。
タルコフスキーやソクーロフにも通じる独特の映像は実に魅力的だ。

前作『サタン・タンゴ』は渋谷の文化村で過去に1度だけ上映されたのだが、
朝10時から短時間の休憩を挟み夕方6時まで、更に最後にはタル・ベーラ監督自ら登場し質疑応答に応じた。
しかし、肝心の質問がその哲学性に言及せず、製作テクニックに終始したのは残念。
監督が、それらの質問を遮り、「映画の内容そのものを観て欲しい」と苦渋の表情でコメントした事は今でも良く覚えている。
Date: 2002/07/03


ノーマンズ・ランド
ボスニア・ヘルツェゴビナ生まれのダニス・タノビッチ監督が、
ボスニアとセルビアの中間地帯である『ノーマンズ・ランド』の塹壕での1日の戦闘を通して、戦争の無意味さ、民族紛争の滑稽さをブラックに取り上げた秀作。
昨年のカンヌ国際映画祭脚本賞、今年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞。
リドリー・スコット監督が先日、ソマリアの紛争を取り上げた『ブラックホークダウン』を公開したばかりだが、こちらは派手な戦闘のシーンがあるわけでもなく、
スポットが当たる当事者達も僅か3名、戯画化された戦争を通し、民族紛争や国連軍、ジャーナリズムを痛烈に批判する。
ボスニア紛争を通しては、アデミル・ケノビッチ監督の「パーフェクト・サークル」や、テオ・アンゲロプロス監督の「ユリシーズの瞳」、
また本では「サラエボ旅行案内」といった名作が生まれたが、この作品も忘れ難い一作となるだろう。
Date: 2002/06/14


青い夢の女
「ディーバ」や「ベティー・ブルー」など輝かしい作品を送り出してきたジャンジャック・ベネックス監督にとっては、92年の「IP5」以来8年ぶりとなる長編で、今回はブラックサスペンスコメディーと言ってもいい新境地を開拓している。
全編青みがかった美しい色調の中、主人公の精神科医デュラン(ジャン・ユーグアングラート)、性倒錯の美しい女オルガ(エレーヌ・ド・フジュロール)との絡みを中心に、いかにもフランス映画らしいスタイリッシュな映像が際立つ作品となった。
フロイトの精神分析を思わせるメタファーがちりばめられたセクシーな映像は、あくまで大人の為のもの。
デュランの恋人役を演じた画家エレーヌ(ヴァレンティナ・ソーカ)も美しく、女のセンスも抜群だ。
複雑なものを単純に見せるのが芸術作品、単純なものを単純に見せるのがハリウッド作品と言ったのはイランのモフセン・マフマルバフ監督だが、この作品は単純なものを敢えて複雑に描いたフランス映画ということが言えようか。
原題は「モータル・トランスファー」だが、文字通り「死体の移動」とともに、精神分析治療の過程で患者が幼児期に両親に向けていた感情などを分析者に向けること、「感情移転」というダブルミーニングがある。
Date: 2002/01/09


夜になる前に
詩人で作家のレイナルド・アレナスの生涯を綴った自伝「夜になる前に」は世界中で出版され、非常に評価が高い。
監督は、「バスキア」を撮った美術家のジュリアン・シュナーベル。
バスキアもホモセクシュアルだったが、今回取り上げたレイナルド・アレナスも同性愛者。

アレナス役を演ずるのはスペインの俳優ハビエル・バルデム。
ビガス・ルナ監督の「ハモン・ハモン」、ペドロ・アルモドヴァル監督の「ハイヒール」、「ライヴ・フレッシュ」などにも出演し大変印象の濃い俳優だが、今作品が代表作になりそうだ。オスカーにもノミネートされている。

アレナスはキューバの田舎に生まれ、土を食べ育ち、ホモセクシュアルに目覚め、首都ハバナで大学に通う。
詩を書き、小説を書くようになって、カストロ体制に追われるようになる。無実の罪で逮捕され、迫害を受け、そして国外脱出に命を賭ける。人生の悲劇は深まるばかりだが、それさえもアレナスは楽しんでいるかのようだ。自分の置かれた境遇を受け入れ、しかし、出版への意気込みは衰える事なくあらゆる手を使い、他人に託し、国外に原稿を持ち出し出版する。最後は、やっとの事でで出国に成功、エイズで客死するまでを描く。
何かを残す人間の生き様とはこういうものかも知れない。数々の示唆に富む作品である。
これは何年に一度というほどの感動作だ。ヴェネチア映画祭で上映後、拍手が鳴り止まなかったというのも頷ける。
Date: 2001/10/03


レクイエム・フォー・ドリーム
低予算SF映画「π」でその存在を大いにアピールしたダーレン・アロノフスキーがハリウッド俳優(ショーン・コネリーの娘のジェニファー・コネリーも美少女役で奮闘)を起用して撮った初の35mm映画作品。ドラッグ中毒の行く付く先を鮮烈に描いた作品で、トレイン・スポッティングより刺激に満ちたおぞましい映像は、背筋が寒くなるほど。
「ハンニバル」や「トラフィック」がお遊びに見えてしまうほど、衝撃は強い。
ケン・ラッセル、ピーター・グリーナウェイ、リチャード・カーン、ディビッド・リンチらを足して醜悪さを増幅させた作品。
音楽は、クロノス・クァルテッドが担当し、リチャード・ナイマンばりの室内楽で興奮を盛り上げる。
異様さと過激さで、アンダーグラウンド部門の映画史上に残る金字塔の誕生と言ってもいいだろう。
平凡な日常に満足出来ない人達の為に作られた映画。万人向けでは到底ないので、要注意。
Date: 2001/03/10


ダンサー・イン・ザ・ダーク
これまで「エレメント・オブ・クライム」や「奇跡の海」などの作品で才能を高く評価されてきたが、イマイチ地味な印象を拭えなかったデンマーク人のラース・フォン・トリアー監督が、ロック界最高のシンガー・ビョークを主役に配し、カンヌのパルムドールを意欲的に獲りに行った作品。(当然の結果として、パルムドールと主演女優賞も獲得)

主役のビョークが歌いまくるミュージカル仕立て。おまけに悲劇もたっぷりと盛り込み、いささかサービス過剰の一作。
しかし、公開を心待ちにしていた僕には、音楽シーンを別にして肩透かしの印象が強かった。ビョークの音楽や、芸術性の高いヴィデオクリップ集に日頃親しんでいる僕にとっては、ロック・ミュージシャン『ビョーク』としての存在感が大きすぎ(助演のカトリーヌ・ドヌーブを目立たなくさせるほどの個性の強さ!)、映画のストーリーはどうしても浮いてしまう。

暗いストーリーに対して、派手なミュージカル仕立てというのも違和感を増幅!すすり泣く声が映画館を覆っていたが、そこまで感情移入出来るのはビョークに日頃親しんでいないからだろうか。無名の女優を起用していたら、もっとストーリーは盛り上がっただろう。

尚、この映画の成功により、3月末からは、1997年の幻の傑作といわれる「イディオッツ」がレイトショー公開される事になった。
Date: 2000/12/25


クレーヴの奥方(マノエル・オリヴェイラ監督) と フィデリテ(アンジェイ・ズラウスキー監督)
ポルトガル映画祭でクレーヴの奥方、フランス映画祭でフィデリテ(『貞淑』という意味)を観ました。
原作は双方とも17世紀フランスでラ・ファイエット夫人が執筆した古典小説「クレーヴの奥方」をベースにしています。
両作共パウロ・ブランコがプロデュースをしているのも興味深い。
事実フィデリテの最後のシーンはポルトガルの古い修道院を使って撮影されています。

91歳の巨匠・オリヴェイラ監督の描く人妻の『貞淑』は、いかにもポルトガルらしくちょっと田舎っぽい背景をベースに、人気ロックスターとの身を焦がす恋。エキゾチックに描かれるその恋は、主演のマルチェロ・マストロヤンニの娘であるキアラ・マストロヤンニの意思の強そうな気品ある風貌と、彼女を追い掛ける下品で情熱的なペドロ・アブルニョーザ(ポルトガルでは有名なロックスター)の対照が面白く、その真剣さがどこか滑稽に見えてくるのも笑えます(あれでは、もはや立派なストーカーですね)。
撮影は、ロベール・ブレッソン監督の遺作である「ラルジャン」やペドロ・コスタ監督の「骨」を撮ったエマニュエル・マシュエルが担当しています。

――――――――――――――――――――――――――

一方、60歳の天才・ズラウスキー監督は、私生活でもずっとパートナーで子供も作ったソフィー・マルソーを主演に起用(今年のカンヌ映画祭の主演女優賞に輝きました)。このコンビではもう4作目となり阿吽の呼吸がぴったり決まっています。
2人が出会った「狂気の愛」の疾走するパワーこそ年々衰えていましたが、僕にとっては、「シルバー・グローブ」、「ポゼッション」以降、絶対の信頼を奉げる監督で、今作品は「狂気の愛」以降では最も硬質な仕上がりになったと思います。

この映画のテーマはズラウスキーの私生活ともだぶり、興味は尽きません。
実際、人気絶頂の美しい内妻と撮影の為に長期間離れ離れになるなど日常茶飯事のはず。入籍をしていないのは、束縛をしない事の意思表明でしょうか。(さすがに会った時にそこまでは聞けませんでしたが…。本当は5時間も6時間も話したい事はいっぱいあったけれど、残念です。「完全版がどうしても観たい!その神をも畏れぬ過激さゆえ政治に押し潰され、16年も幽閉された上に切り裂かれた今世紀最高の孤高の映画、シルバー・グローブをもう1度撮り直して下さい!」という僕の無茶な願いは叶えられるのでしょうか)

濃厚な2時間45分はズラウスキーにとっては特に長い映画ではありませんが、(本人も、「とても短い映画です」と紹介していました。これでも切りまくって短く編集したのでしょう)長さを感じさせない迫真の緊張感で現代の『貞淑』を描き切っています。
監督本人曰く、「とても感傷的な映画」となった本作では、主演のソフィー・マルソーを売れっ子カメラマンに設定、仕事で飛びまわる生き生きとした人生を送る今のオンナを描きながら、「愛がなければ人は死ぬ」という使い古されたテーマにも真面目に取り組んでいます。
レオス・カラックスの「ポーラX」でも同様のテーマが見え隠れしましたが、身を焦がす「恋の病」を改めて訴えなければならない程、現在の「恋」が形骸化し、お手軽になってしまって、危機的状況を迎えているのかも知れませんね。
いつもの事ながら、フランスで撮られた夜のシーンは何とも深みがあり、美しい。
また、ラストシーンは、「ブレードランナー」のようでもあり、愛の再生にも余韻を残しています。
Date: 2000/06/23


オール・アバウト・マイ・マザー
僕の大好きなスペインのペドロ・アルモドヴァル監督の最新作!
(アカデミー賞外国映画賞・カンヌ国際映画祭最優秀監督賞・1999年タイム誌年間映画ベストテン第1位)

アルモドヴァル監督は、現在48歳。同性愛やセックスなどを正面から取り上げた作品が特徴。スペイン映画界は、1975年のフランコの死以後、表現の制約から解き放たれ、彼に続く才能が続々と開花中である。
しかし、3月の総選挙で右派のアスナール国民党が政権を握り、文化面の待遇が悪くなりつつあるのが残念。

今作品では、毎度お馴染みの艶笑コメディーとは一線を画した作りになっている。タイトル通り、母性を題材に取り上げ、相変わらずの捻りは随所にちりばめられているものの、意外なほど真面目な視線も顕著で、見応えのある人間ドラマに仕上がっている。

アルモドヴァルの世界に必ず登場する両性具有のキャラクターは今回も大活躍。毎度の事ながら、この人は男?それとも女?と疑念を抱かせながら物語りは進行していく。スペインにはこんなに性別不明な人が多いのかと心配になるほど、まともなキャラクターはいつもながら殆ど出て来ない。
更に、人間喜劇(悲劇)もたっぷりと盛り込んであり、興味は尽きない。美しい色彩は相変わらず眼を楽しませてくれる。赤、青、黄色…。僕にとっては、半分はこの色を楽しみに彼の映画を見に行っているといっても過言ではない。
この派手な原色を身に纏い(髪の色がプラチナブロンドだと原色の服が実に似合う)、またインテリアに取り入れ、人間模様の毒々しさを更に引き立てている。

今作品は、前作あたりと比べるといささか小品の感は否めないが、女性、とりわけ母性に注がれる視線はあくまで優しい。
Date: 2000/05/12


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