L'ange Sauvage

僕は野生の天使、熱いガゼルの体を抱きしめる / 僕は待つ 神々の怒りを、あるいは悪魔の美しさを
僕の死にかけた世界を覆いつくしてほしいから  ――――― CYRIL COLLARD





ポゼッション  1999/05/27
永遠と一日  1999/04/20
クッキー・フォーチュン  1999/03/06


ポゼッション
(1982年日本公開、仏・西独合作、123分)

僕の大好きなアンジェイ・ズラウスキー監督の作品です。
現在もソフィー・マルソーと同棲中で有名なこの監督は、1940年、ポーランド・ルブフ生まれ。(生まれた時には、ナチス、ソ連の占領下であった為、解放に至る4年間の幼少期が、彼の人生に大きな試練となったのではないかと思われます)1957年、パリ国立映画学院(イデック)入学。その後、アンジェイ・ワイダ監督の元で「サムソン」「二十歳の恋」「灰」などで助監督として参加。

初監督は1971年「夜の第三部」、その後1972年「悪魔」、1974年「大切なのは愛する事」、そして1976年には、6時間の大傑作「シルバーグローブ」を製作、しかし、当局の検閲によりフイルムはズタズタにされてしまいました。
(現在は、残ったフイルムから修復されて1987年に完成した、3時間バージョンの物を、ビデオで見る事が出来ます)そしてこれから御紹介の1980年の「ポゼッション」が誕生した訳です。
撮影は、ブルーノ・ニュイッテン(現在、イザベル・アジャーニの旦那)です。

このポゼッションは、1981年のカンヌ映画祭やセザール賞で、イザベル・アジャーニが最優秀女優賞を獲得、彼女の出演作の中でもその怪演は出色です。
夫の役はサム・ニール。最近は、ジュラシックパークでも元気な所を見せていました。
また、脇役に、ブリキの太鼓でオスカルの父親役で名演を見せた、ハインツ・ベネントも出演しています。

ストーリーは、見てのお楽しみ。サスペンス仕立てです。モラリストなら眉をひそめる過激な表現、性的妄想、暴力、そして戦慄が支配しています。
ルイス・ブニュエルのような、示唆や逡巡とは正反対の、正面から斬り込んでくるタイプの映画です。
内容が内容だけに、一部の興味のある方だけにお勧めいたします。
(御家族でお楽しみになるような物では御座いませんので、念の為)
Date: 1999/05/27


永遠と一日
待ちに待った、テオ・アンゲロプロスの新作「永遠と1日」(98年のカンヌ映画祭パルムドール大賞)が、公開されました。
アラン・タネールの「白い町で」の船乗りの役が素晴らしかった、ブルーノ・ガンツを主演に迎え、映像詩人アンゲロプロスの秀作が、また1つ登場。
前作「ユリシーズの瞳」で民族紛争を鋭く抉って、95年のカンヌ映画祭グランプリを受賞。あれから4年、再び、当地は戦火にまみれ、難民が、ヨーロッパ各国に溢れ出ています。
死期を悟った作家(詩人)の最後の1日を追ったこの作品では、ひまわりのように美しい妻(イザベル・ルノー)との追憶、愛犬との別れ等を挟みながら、悲しみを背負った難民の少年(本物!しかし、ちょっとインパクトに欠けるのが残念)との1日の触れ合いを通じて、現在のギリシャが抱える難問を、炙り出して行きます。(特に国境のシーンは、鮮烈!)

字幕翻訳に、池澤夏樹を起用し、監督の意図する所も、違和感なく伝わって来ます。
これまでの彼の作品には見られなかった明るい陽光や少年の笑顔など、変化に富んだ、陰影のある美しい映像詩は、音選びの慎重さと相俟って、豊かな情感を醸し出しています。
現在監督は63歳と言う事ですから、あと2〜3作は、名作を残してくれることでしょう。

「朝露に濡れた明けの明星が、輝かしい太陽の到来を告げて、晴れ渡った空を乱すものは霞も影も一つもない。
やさしい風が吹き渡り、見上げる顔を愛撫する。魂の奥へささやくように、人生は美しい。そう、人生は美しい」

(作中の詩人、ソロモスの詩)
Date: 1999/04/20


クッキー・フォーチュン
この映画については、このコーナーで取り上げるつもりはなかったのですが、3月6日の朝日新聞の夕刊で沢木耕太郎が書いていたので、私見を披露させていただく事にしました。

この映画には、アルトマンが前作「ショート・カッツ」で見せたほどの鋭い切れ味はないのですが、だからと言って、その独特の視点は、相変わらず皮肉や諧謔に満ち、南部ののんびりとした小さな町の住人達のとぼけた点描と共に、ほのぼのとした滋味に富んだ味わいを持っている事に違いはありません。

P・T・アンダースンが30歳と言うその若さを「マグノリア」で暴露しているのに対し、75歳にしてなお闊達なロバート・アルトマンは、手慣れた手法で抑え目に表現し、すべてにソツがない。(勿論、いつものように捻ってはいるものの、破綻もない)

エリック・ロメール同様、老いてなお、フレッシュな感性を維持しながら、新作を生み出しつづける事は驚異ではありますが、計算し尽くされながら、過不足のない表現を展開している事には、さすが職人技と言わねばなりません。更に、古臭さを感じさせないのもいいですね。

エアロスミスのスティーヴン・タイラーの愛娘であるリヴ・タイラーも稚拙な演技力でありながら、今時の蓮っ葉な娘を生き生きと演じ、ワン・ランク・アップに成功。周りを固める老獪な男優・女優陣もしっかりした演技で映画を締めています。

確かに、これがアルトマンの作と知っているからこその不満もあるのだろう。
名前も知らぬ新人の作であったら、一際注目を浴びていたに違いないというのが本音でしょうか。
Date: 1999/03/06


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